『図解 海外子会社マネジメント入門』で海外拠点のガバナンス体制やコンプライアンス活動を検討する!

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『図解 海外子会社マネジメント入門』

著者名:毛利正人
発行日:2014年7月11日
発行元:東洋経済新報社
ページ数:223ページ
価格:2,420円(税込)

法務に役立つ度:★★★☆☆

1.本書の紹介

米国公認会計士でもある著者による書籍であり、著者は日本企業の海外子会社に対するコーポレートガバナンス体制構築の経験が豊富な方です。

書名はマネジメント入門ですが、本書は、海外子会社における①ガバナンス、②リスクマネジメント、③コンプライアンス活動、④内部通報制度、⑤内部監査活動の構成になっております。

私は、日本企業の海外拠点に対するコンプライアンス体制の構築について知りたいと思い、本書を手に取りました。
なかなか海外拠点について勉強する機会もなく、また、特に海外拠点のコンプライアンスに関する書籍も少ないなかで本書を読んだのですが、とても理解しやすく、自分の中でアプローチの基礎ができたように感じました。

発行年が少し古いですが、問題ありません!

2.法務職に役立つポイント①~海外拠点に対する体制構築の原則

それでは、以下、法務職に役立つポイントを記載していきます。

私は、海外拠点に対するコンプライアンス活動を知りたくて本書を読んだのですが、その他の項目についても海外拠点に対する体制構築の原則が一本貫かれています。

それが、海外拠点のマネジメントに不可欠な要素としてのGRC、GRCとは、G(ガバナンス)、R(リスクマネジメント)、C(コンプライアンス)を指します。
そして、このGRCについて、①日本本社が主導して体制や制度を導入し、②実際に機能しているかを日本本社がモニタリングするということです。

例えば、法務に関連する「規程・制度」の項目では、海外子会社にどこまで権限移譲するか、親会社の決裁(事前承認)をどの範囲まで必要とするか、子会社が自主管理するための規程の整備、子会社からのレポーティングラインをどうするか、緊急時の報告体制をどうするか、といったことが本書では述べられており、制度導入からモニタリングまでの流れを理解することができます。

日本企業が遅れているERM(エンタープライズ・リスクマネジメント)という取り組みも紹介しています!

3.法務職に役立つポイント②~海外拠点に対するコンプライアンス活動

海外拠点に対するコンプライアンス活動については、本書の二つのポイントが役に立つと思います。

まずは、コンプライアンスも健全なガバナンスが前提となっている点です。
なぜなら、子会社トップが意図的にコンプライアンス体制を無視することは簡単で(本書では「マネジメント・オーバーライド」)、子会社トップが自らコンプライアンス活動を推進しないと意味がないからです(本書では「トーン・アット・ザ・トップ」)。

次に、コンプライアンス活動の絶対的な目標として、①守るべき法令を知る、②法令の周知と教育を徹底すると指摘し、そのための体制として、①本社法務部門と、②本社コンプライアンス推進統括部署の役割分担にふれています。

また、具体的な苦労、海外子会社側の他の管理活動(内部統制やISOなど)との重複による負担感や、子会社側の消極姿勢やその払拭方法などが述べられており、著者はやはり実務経験が豊富だなとあらためて感じました。
このような視点は特に役に立つと思います。

そして、最後に重要なコンプライアンスリスクとして、①贈賄防止と②競争法関連という二つのリスクについてふれています。
この二つのリスクはどの場面でもふれられているポイントなので、海外法務の実務に携わったことがない私にはあまり実感がなかったのですが、あらためて重要なリスクだと認識しました。

国内での取り組みをどうやって海外拠点に展開するかというアプローチです

4.まとめ

本書は、海外拠点に対するコンプライアンス施策を検討する上で、最初の一歩になるものだと思います。
入門書好きの私にとっても、理解のしやすさ内容の豊富さ、ともに十分な内容になっていました。

やはりどの書籍にも言えることですが、実務を経験している方が、その経験を分類凝縮して、どの企業にも共通して横展開できる部分を絞りだした書籍というものは本当に役に立つと感じました。

私も自分の経験をいつか書籍にしたいという夢があります!

5.カスタマーレビュー

レビューや評価をご確認ください。

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