法務はいろいろな社員から法律や契約書について相談を受けると思います。
ここでは、職種別の相談内容とその対応について記載していきたいと思います。
1.営業からの相談
営業からの相談で多いのは、今度このようなビジネスをやりたいのだが、どういった契約にしたらよいかわからないという相談だと思います。
まずはどういったビジネスがしたいか法律用語を交えず、「聴く」ことが必要になります。
過去に同様のビジネスで作成した契約書を例示に出してもいいかもしれません。
判断に迷うこともあると思いますが、法務としては何らかの答えを出してあげなければなりません。
契約書のひな形集を確認し、そこにも近い契約が無い場合、私は民法の13種類の典型契約(有名契約)のどれに近いかを判断し、近い典型契約をベースに契約書案を作成しました。
次によくある相談は、取引先の売掛金が回収できないという相談です。
回収不能になった場合は、最終的には経理部門による貸倒損失の計上となるのですが、その間に法務としていろいろ営業の相談に応じてやるべきことは多いと思います。
営業担当が分割払いを交渉した場合の、合意書や覚書の作成であったり、内容証明の作成であったり、顧問弁護士との相談や訴訟準備もあります。
営業と積極的に協力して、スムーズな回収をはかることが大切です。
営業のニーズを理解して提案する必要があります!
2.人事からの相談
人事からの相談が多いのは、やはり社員の問題だと思います。
最近特に多いのが、メンタルヘルスが不調な社員の勤怠が安定しないケースです。
朝会社に来ることができなかったり、無断欠勤だったり、最終的には休職にいたります。
もちろん、こういった対応は人事がメインなのですが、結局復職できずに、退職となった場合、労働基準法上の問題は無いのか、どういった書面を取り交わしたほうが良いのか、など相談があると思います。
また、こういったメンタルヘルス問題の裏には往々にしてパワハラやセクハラの問題が隠れていることも多いです。
人事はもちろん、内部通報担当者や、時には経営層とも相談しながら、慎重な対応が必要です。
そういった社員との面談に法務も出席する場合もあります。
法務といえども、対面スキルは必要です。
日頃から、社員とのコミュニケーションを欠かさず、人柄であったり、話を聴く力(傾聴力)であったり、社員から信頼される人間力を高めて欲しいと思います。
社員情報の秘密保持は徹底してください!
3.総務からの相談
総務の業務は多岐にわたり、法務とのやり取りも多いと思います。
以下、相談項目を挙げてみたいと思います。
①株主総会や取締役会などの機関運営
会社法にのっとった運営ができているか。
②契約書管理
有効な契約書が適切に管理されているか。
③職場の安全衛生管理体制
労働安全衛生法を始めとする安全衛生関連法を遵守した職場になっているか。
④株主管理
株主からの権利行使について適切に対応しているか。
⑤社内規程の整備
規程の改訂、新規策定、管理について。
⑥許認可管理
更新手続や新規申請について。
⑦知的財産権管理
更新手続や新規申請について。
⑧不動産管理
賃貸借契約の締結や、原状回復工事の対応について。
私が総務時代、法務の方とは頻繁にコミュニケーションを取っていました!
4.経営層からの相談
経営層からは取締役会の決議事項になるような、あるいは上場企業であったら適時開示事項に該当するような重要案件へのプロジェクト参加が求められることがあると思います。
例えば、ジョイント・ベンチャーの設立であったり、M&Aの実施であったり、子会社の設立もあるかもしれません。
こういったプロジェクトでは、通常の契約ではなく、案件特有の契約の知識が必要になります。
例えば、ジョイント・ベンチャー契約、株主間契約書、M&Aに関する意向表明書、基本合意書、株式譲渡契約書などが挙げられます。
また、会社法の知識も必要になります。
顧問弁護士に相談することも増えると思いますが、こういった経験はこれから法務を続ける上でとても貴重な財産になるため、積極的に取り組んでください。
私もこういったプロジェクトに参加したことがありますが、交渉、契約締結、適時開示と一歩一歩進み、最終的にはプレスリリースの発表で完結したときの達成感はとても大きなものになりました。
法務という立場は経営層に対する忖度は必要ありません!
5.まとめ
これまで法務が受けるであろう社内の法務相談の内容について記載してきました。
項目は以下になります。
法務でよくあるのが、「これは法律に関係しないから法務への相談内容ではない」として相談を受け付けないことです。
たとえ一見そう見えても、話を聴いていくうちに、法律に関連することであったり、最終的に法律に関連しなくとも、他部署の相談先に一緒に説明に行ったりと、相談する社員にできるだけ寄り添ってください。
そうすると何でも頼ってくる社員もいると思いますが、私はそれでいいと思います。
法務といえども管理部門の一員で、管理部門は社員にどれだけスムーズに働いてもらえるかが一番の目的だからです。
どの職種でも人柄や人間力は必要になりますね