『独占禁止法入門 第7版』
著者名:厚谷 襄児
発行日:2012年1月13日
発行元:日本経済新聞出版社
ページ数:271ページ
価格:1,100円(税込)
法務に役立つ度:★★★★☆
1.本書の紹介
本書は、公正取引委員会事務局に長年在籍し、事務局長も務めた著者による書籍となります。
著者は北海道大学法学部の教授も務めた経歴があるのですが、通常の教授の著作と違い、簡潔な文章で読みやすい内容となっています。
その代わりと言ってはなんですが、図表をほとんど使用しておらず、ほぼ文章だけでわかりやすく説明しています。
私は、ある資格試験を受験しようかと思って、その過去問を解いたところ、独占禁止法の分野に弱いということに気づきました。
一回基礎から学ぼうと思い、本書を手に取りました。
日経文庫の法律に関連する書籍はどれも版を重ねて最新の内容になっており、また持ち運びも便利でとても気に入っています。
電車で読めるサイズ感は重要ですよね!
2.法務職に役立つポイント①~法務にとって必要かつ十分な内容
それでは、以下、法務職に役立つポイントを記載していきます。
本書は入門書ですが、法務にとって必要かつ十分な内容で独占禁止法の基礎を学ぶには本書一冊で十分だと感じました。
法務の中で独占禁止法に関連する業務はどのようなものがあるでしょうか。
各企業のカルテルや不公正取引に対する感度は上がってきており、従前に比較して、独占禁止法に違反する事例も少なくなっていると感じます(つい最近、電力会社への課徴金事例はありましたが)。
そのような中、法務としては、①独占禁止法の改正があった場合の社内周知、②独占禁止法に違反しないようにするための研修資料作成が挙げられます。
特に上記の②のような業務であれば、本書の内容で十分だと思います。
あとは、実際の条文にあたればよいと思いますし、私は本書を通読中に条文にあたったのは一度だけでした。
罰則のところがわかりにくく、一度だけ条文を確認しました
3.法務職に役立つポイント②~各規制の制度趣旨の解説が良い
公正取引委員会では独占禁止法や下請法のパンフレットなどで制度のわかりやすい資料を公開しています。
ただ、ポイントを絞ったパンフレットでは理解できないところ、それはなぜこのような規制があるのかという制度趣旨の部分です。
本書では、まずなぜ独占禁止法があるのかという目的の部分を解説し、各規制についても例えばカルテルはなぜ規制しなければならないのか、その弊害は何かというところから解説しており、それがあることによって規制内容が理解しやすくなっています。
このような制度趣旨をわかりやすく解説できるということは、本当に独占禁止法に精通している方でないとできないところだと思います。
制度趣旨からの思考方法は法解釈の基本ですよね!
4.法務職に役立つポイント③~具体的な事例が豊富
本書では、独禁法違反の事例が豊富に紹介されています。
いたるところで、過去の事例が紹介されており、規制内容の解説がわかりにくいところでも、その後の事例によって理解できた部分が多数ありました。
さすがに進駐軍に資材を納入する事例は古すぎて現在でも適用できる先例なのかなと疑問に思いましたが。
独占禁止法の研修資料を作成するときに、本書の豊富な事例の中から研修資料に反映するという使い方もできると思います。
戦後の復興期でも市場の公平性をチェックしていたなんてすごいですね
5.まとめ
本書は、独占禁止法の基礎を学びたいと思う法務にとって、一冊で十分という内容になっています。
私は、基礎は入門書で学ぶというスタンスなので、このアプローチは独占禁止法の分野でも活かされたと思います。
私自身、独占禁止法について知らないことが多いことに気づかせてくれました。
ただ、本書は法律を体系的に勉強したことのある方にとっての入門書であって、そうでない方には読みづらいと思うので注意は必要です。
理解できないところはいったん飛ばして読み進めていき、先を読むことによって理解できるという読み方ができる方でないと立ち止まってしまうと思います。
私の場合、5日で読了しました!
6.カスタマーレビュー
レビューや評価をご確認ください。